車の色で事故率は変わる?
論文から分かった安全な色と本当の選び方
「黒い車は事故が多い」「白が一番安全」「濃紺は見えにくい」。 車のボディカラーについて、さまざまな情報があります。 そこで、海外の大規模事故研究や査読論文を確認し、 色と事故の関係をどこまで言えるのかを整理しました。
車体色によって周囲からの見つけやすさが変わる可能性はあります。 ただし、事故は色だけで決まるものではありません。 色による差よりも、速度、安全確認、ライト点灯、運転支援装置などの方が重要です。
それでも色が決まらず迷っている場合は、 ホワイト、パールホワイト、イエロー、クリーム系が、 研究上の低リスク側として無難な候補です。
「事故件数」と「事故率」は別のものです
人気色ほど道路を走っている台数が多いため、 単純な事故件数だけでは色の安全性を判断できません。
台数が多い色は事故件数も増える
白や黒などの人気色は保有台数自体が多いため、 事故現場で多く見かけても、それだけで危険とは言えません。
本来は走行距離も必要
厳密に比べるには、色ごとの車両台数だけでなく、 年間走行距離や昼夜の走行割合まで確認する必要があります。
色以外の条件が大きい
車種、年式、安全装備、運転者の年齢、使用目的、道路環境なども 事故への関与に影響します。
このページで使用する「事故リスク」は、 白い車を基準に、色が関係しやすい衝突事故へ関与した相対的な傾向です。 日本国内の保有台数1万台あたり、または走行距離1億kmあたりの事故率ではありません。
豪州約85.5万件の事故データではどうだった?
車体色と事故の関係を調べた代表的な資料が、 モナシュ大学事故研究センターの研究です。
研究の規模
オーストラリアのビクトリア州と西オーストラリア州で、 警察に報告された事故データを分析しています。
- 対象:約855,258人・車両
- 事故データ:1987~2004年
- 車両年式:1982~2004年
- 車体色:17分類
- 白を1.00として比較
研究の読み方
- 商用車とタクシーは分析から除外
- 車種・明るさ・地域を層別化
- 単独事故を走行機会の代替指標として使用
- 実際の色別走行距離は不明
- 色が事故原因だと証明した研究ではない
全時間帯を合わせた事故関与リスクの傾向
| 車体色 | 白に対する相対リスク | 95%信頼区間 | 白との差 | 統計的有意差 |
|---|---|---|---|---|
| グレー | 1.10 | 1.05~1.17 | 約+10% | あり |
| シルバー | 1.10 | 1.06~1.14 | 約+10% | あり |
| レッド | 1.08 | 1.05~1.11 | 約+8% | あり |
| ブラック | 1.06 | 0.98~1.14 | 約+6% | なし |
| ブルー | 1.05 | 1.02~1.08 | 約+5% | あり |
| グリーン | 1.04 | 1.005~1.08 | 約+4% | あり |
| ホワイト | 1.00 | 基準 | 基準 | ― |
| クリーム | 0.99 | 0.88~1.10 | 約-1% | なし |
| イエロー | 0.99 | 0.91~1.07 | 約-1% | なし |
最も重要な点: クリームやイエローが0.99でも、白より統計的に安全だったとは確認されていません。 この研究で正確に言えるのは、 白より明確に低リスクと証明された一般色はなかったということです。
色の差は、昼・薄暮・雨天で同じではありません
車体色は単独で見えるのではなく、空、道路、建物、山、天候などの背景と一緒に見えます。
晴れた昼間
モナシュ大学の研究では、車体色による差が最も強く表れた条件です。 白と比較して、ブラック約+12%、グレー約+11%、 シルバー約+10%、ブルーとレッド約+7%でした。
朝夕の薄暮
ブラックは白より約47%高い結果でした。 ただし事故件数が昼間より少なく、推定値の幅も広いため、 「黒はいつでも47%危険」とは言えません。
夜間
夜はヘッドライト、テールランプ、街路灯の影響が大きくなります。 車体色だけでなく、ライト点灯の有無や道路照明も重要です。
暗い色を選んでも、早めのライト点灯によって車の存在を周囲へ知らせやすくなります。 特に富士市・富士宮市では、朝夕の逆光、曇天、雨天、郊外の暗い道路で 早めにライトを使うことが大切です。
「濃紺は事故率が高い」と言われた理由
2013年に発表された韓国の研究では、事故発生の順位を ブルー、グリーン、ホワイト、レッド、ブラック、シルバー、 ブラウン、イエローの順としています。
約10年前に「濃紺や青は事故が多い」という情報を見た方は、 この研究や、それを紹介した資料を見た可能性があります。
ただし、濃紺単独の事故率ではありません
この研究では、水色、青、濃紺を現在の市販色のように細かく分けていません。 また、電話アンケートを中心とした調査で、 走行距離、車種、安全装備、運転者属性などを十分に調整できていません。
大規模なモナシュ大学研究でも「ブルー」は一つのカテゴリーであり、 濃紺だけを独立させた大規模な事故率は確認できません。
現時点で適切な表現は、 「濃紺は暗い背景で見つけにくくなる可能性があるが、 濃紺が事故率1位と証明されたわけではない」です。
研究によって結果が違う色もあります
シルバー
豪州の大規模研究では白より約10%高い結果でした。 一方、ニュージーランドの研究では、白より重傷事故のオッズが低い結果でした。
イエロー
シンガポールのタクシー研究では、黄色いタクシーは 青いタクシーより事故が約9%少ない結果でした。 ただし、一般家庭の車へそのまま適用はできません。
ブラック
昼間と薄暮では白より高い傾向でしたが、 全時間帯を合わせた約+6%は統計的に明確な差ではありませんでした。
国、道路環境、車種構成、事故の定義、調整した項目が異なると結果も変わります。 一つの研究だけで「世界共通の安全色ランキング」を作ることはできません。
昔の研究を、現在の車へそのまま当てはめない
中心となるモナシュ大学研究は、1987~2004年の事故データを使用しています。 現在の車には当時よりも、車の存在を知らせたり、 衝突を回避したりする装備が増えています。
ライト関係
LEDヘッドライト、オートライト、デイタイムランニングライトなど。
予防安全装備
衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報、誤発進抑制機能など。
駐車支援
全方位カメラ、バックカメラ、パーキングセンサーなど。
研究報告でも、車体色による影響は、 飲酒運転や速度超過などの運転行動より小さいと説明されています。 安全装備と安全運転を、色より優先して考えるべきです。
数字を短く切り取ると、意味が変わります
12%は昼間に限定した白との比較です。 全時間帯では約+6%で、統計的に明確な差ではありませんでした。
47%は薄暮時に限定した結果です。 すべての道路、天候、時間帯に当てはまる数字ではありません。
白は研究上の基準色として無難でしたが、 色だけで事故を防ぐことはできません。
赤は日中に印象が強い色ですが、 大規模研究では白より事故関与リスクが少し高い結果でした。
研究によって結果が反対です。 一つの研究だけで最も安全な色とは断定できません。
好きな色でえらべばいい!
ここまで研究を確認しましたが、 ボディカラーだけで事故が決まるほど単純ではありません。
黒や濃紺などの暗い色は、背景や時間帯によって 見つけにくくなる可能性があります。 しかし、だからといって選んではいけない色ではありません。
好きな色が決まっている方
好きな色を選んで大丈夫です。 早めのライト点灯、安全装備、安全確認によって 色の弱点を補いましょう。
色が決まらず迷っている方
ホワイト、パールホワイト、イエロー、 クリーム系が低リスク側として無難な候補です。
パールホワイトとソリッドホワイトを分けた事故研究は確認できません。 また、ライトブルーと濃紺、ライトグレーとダークグレーも、 大規模研究では細かく分けられていません。 同じ色名でも、実際の明るさや見え方は大きく異なります。
車の色と事故率について
白い車が一番安全なのですか?
「白なら事故に遭わない」という意味ではありません。 代表的な大規模研究では白が基準色とされ、 白より明確に低リスクと確認された一般色がありませんでした。 そのため、迷った場合の無難な候補と考えられます。
黒や濃紺は選ばない方がよいですか?
避ける必要まではありません。 暗い背景や薄暮時には見つけにくくなる可能性があるため、 早めのライト点灯と安全確認を意識することが大切です。
パールホワイトと普通の白で事故率は違いますか?
両者を分けて比較した信頼性の高い大規模事故研究は確認できません。 一般的には同じ白系として扱われています。
赤は目立つので安全ではありませんか?
昼間には印象が強い色ですが、背景や明るさによって見え方は変わります。 大規模研究では、白より事故関与リスクが少し高い結果でした。
結局、色より何を優先すべきですか?
衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、ライト性能、 視界の良さ、車体サイズ、運転のしやすさを優先してください。 そのうえで、気に入った色を選ぶのが現実的です。
この記事で確認した研究・資料
2026年6月時点で確認した資料です。
- Monash University Accident Research Centre, An Investigation into the Relationship between Vehicle Colour and Crash Risk 豪州2州の約85.5万件を使った中心資料。白を基準とした色別事故関与リスクを分析。
- Furness et al., Car colour and risk of car crash injury, BMJ, 2003 ニュージーランドの人口ベース症例対照研究。シルバーについて豪州研究と異なる結果。
- Ho, Chong and Xia, Yellow taxis have fewer accidents than blue taxis because yellow is more visible, PNAS, 2017 シンガポールの黄色と青のタクシーを36か月比較した研究。
- Shin and Lee, Correlation between Car Accident and Car Color for Intelligent Service, 2013 ブルーを高い側とした韓国研究。ただし調査方法と交絡因子の調整には限界があります。
海外研究の道路環境、車種構成、灯火事情は日本と同じではありません。 そのため、研究の数値をそのまま日本国内の事故率として使用していません。
カタログだけでなく、屋外で色を見比べてみてください
同じ色でも、晴天、曇天、日陰、夕方では見え方が変わります。 さのげんでは、色の好みだけでなく、青空駐車、夜間運転、 洗車の頻度、ご家族の使い方、安全装備まで含めて一緒に考えます。
好きな色が一番。迷ったときは、使い方に合う色を一緒に探しましょう。



















